2017年10月6日金曜日

カズオ・イシグロ VS 村上春樹 読み比べてみたよ

2017年度のノーベル文学賞。受賞者はイギリスで活躍されている作家カズオ・イシグロさんに決定しましたね。

日本では、毎年10月に入ると「村上春樹さん、今年は受賞なるか」と、テレビなどのメディアを中心に盛り上がるのが恒例。ある種、ボジョレー・ヌーボーと並んで秋の風物詩みたいになっているような気がしますが…。これまたお約束で、今年も村上さんは受賞を逃してしまいましたね。

今回は、キャンプと読書が好きなアラフォーの母さんが、話題の2人の小説を読み比べた感想をつぶやきたいと思います。

それでは、よかったらしばしお付き合いください(^^)









実はハルキストの母さんの本棚
村上さんの本がデーンと奉られています(笑)






偉大なるマンネリ

文学界の桑田佳祐




ここで話は少し横にそれますが、私は村上春樹さんのことを勝手ながら、文学界の桑田佳祐さんと呼ばせて頂いております。

桑田さんといえば、言わずと知れた日本を代表するミュージシャンの一人ですよね。1978年にデビューして以来、今なお第一線で活躍されているなんてスゴイと思います。

そして何より、デビュー当時と変わらぬ桑田節で「男女の恋愛」を歌い続けているそのお達者ぶりが本当にスゴイ!と思うんです。2017年も絶好調。朝ドラ「ひよっこ」で、桑田さんの「若い広場」が主題歌になっていましたが、その歌詞の最後のフレーズにしびれます。「明日誰かが待っている」ですよ、奥さん。






最初の方の歌詞だけ聞いていると、昔の恋を懐かしむ歌なのかな~と思わせるんですが、最後にそうじゃないと分かるんです。まだまだ当然のようにこの先新しい出会いがある、そういった歌詞なんですね。

そんなギラギラな桑田さんと、安西水丸さんの描くシンプルな似顔絵のイメージが強い村上さん。「芸風ちゃうやんけ!?」というツッコミが聞こえてきそうですが…。お2人には共通点が3つあると思うんです。

共通点その1。お2人ともセールス的に成功している。昔も今もずっと。需要がとにかくある。ファンが多いんです。

桑田さんも村上さんも、デビューしたての頃は、一発屋扱いされたこともなくはないですが、今となってはもう。こんなに長いこと売れ続けているアーティスト・作家さんは本当に限られていますよね。

共通点その2。唯一無二の存在である。

どちらも、これまでになかった独自の表現世界を切り開いて、その作品には中毒性がありますよね。

例えば、桑田さんはイケイケの曲なのに演歌っぽい歌い方、さらに歌詞は漢字・英語ミックスで韻を踏みまくり!というとんでもない世界を作り上げてしまいました。それが耳に心地よくてクセになるんですよね。

一方、村上さんの文章は、短いセンテンスでシンプルな文体なのに比喩が神レベル。疲れずに簡単に読めるのに、ハッとさせられる表現の連続で、それを追い求めていつまでも読んでいたくなる。だから、これまたクセになっちゃうんですよ。

共通点その3。偉大なるマンネリ。

キャラ的には対極に位置しているようなお2人ですが、1番の共通点はやっぱりここだと思います。

桑田さんは何十年も恋の歌を歌い続けているけれど、それはけっしてマイナスではなくてすごいことだと思っています。マンネリだけど飽きられない魅力があるってことですよね。その魅力を失って欲しくないです。桑田さんが、これからもずっと甘くて切ない恋の歌を歌ってくれますように。

そして、村上さんにも同じことが言えると思います。新作が発表されるたびに「いつもの村上ワールド」「村上節健在」と、私たちをいい意味で喜ばせてくれます。

村上さんの作品の中で特に好きなものを3つあげろと言われたら、私だったら「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」を選びます。読まれたことがある方には納得の?「典型的な村上作品」ですよね。



読み込まれすぎてボロボロ



私の好きな3作品は、どれも、謎解きのようなストーリー展開で飽きないようになっているんですよ。ぐいぐい引き込まれて、ホントお勧めです(^^)

また、主人公がその謎の問題を解決するために、こちらの世界とあちらの世界を行き来するという設定が特徴。そして、なんだかんだで、いろいろな助けがあって、人ならざる巨大で邪悪な敵をやっつけて決着らしきものが着くという筋書なんですよ。

だけど!ここが重要だと思うんですが、村上さんの作品って、先にあげた3作品に限らず終わり方が独特な気がするんです。一応敵はやっつけたはずなのに、主人公にはいまだ解決しなければならない問題が残されているような終わり方をするんですよね~~。

これは私の勝手な解釈なんですが。村上さんの作品に出てくる「主人公が追う謎」は「村上さんご自身の抱えていらっしゃる問題の象徴」なのではないかと思うんです。根拠は漠然としていてうまく説明できないのですが。

それで、主人公がその謎の問題を解決するために「井戸に潜ったりしてあちらの世界にいく行為」というのは、村上さんが「ご自身の心の中に深く潜り込んで深層心理に到達する作業」なのかなと思っています。

また、「主人公が邪悪な敵を倒す」ということは、村上さんご自身が自ら「自分の心の闇を暴いて白日のもとに晒す行為」なのかなと…。これも憶測ですが。

最後に、「敵を倒したのにまだすっきりしない」というのは、まだ村上さんご自身が「もっと奥の方にある自分の中の闇と全ては対峙しきれていない」ということを暗に意味しているのではないかな~~~と勝手に思っています。

全く見当違いだったらすみません!

なんというか…まとめると私にとっての村上さんの作品は「永遠の自分探し小説」とでも言うんでしょうか?それをマンネリと言うこともできると思うのですが、そこがよいと感じて楽しみにしている読者の方の、そのとてつもなく多いこと!

自分探しの答えの出ないでいる村上さんが、とても魅力的ということですよね。少なくとも私にとってはそうです。これからも、村上さんには井戸に潜り続けてほしいです!










一方カズオ・イシグロの作品は…




村上さんたら、未だに自分探ししちゃって若いんだから。でもそこがいいのよね。と思っている私。一方、今回実際にノーベル賞を受賞したカズオ・イシグロさんの作品は渋いです。

「日の名残り」「私を離さないで」「忘れられた巨人」の3作品しか読んだことがないのですが、渋いです。

どれもセンテンスが短くて読みやすく、そこは村上さんの作品と通じるものがあります。しかし良くも悪くも若い村上さんと違う点は、その渋さだと思います。(渋い渋いしつこい?)

例えば「日の名残り」は、イギリスの老執事が主人公。私からしてみたら、主人公は仕事はできるんだろうけど、若いときに己の美学のために?大事なものを得るチャンスを逃したおバカさん。「あんた!あのときあのチャンスを逃しちゃダメだったのよ!もう!バカバカ!」といった感じなのですが。

でも、そんな主人公の美学というか信念というかそういうのを貫くところがまたいいというかなんというか……読まれてない方には何が何やらですよね。すみません。

ここですごいなと思ったのが、作品の最後にイシグロさんが、主人公にとても素敵なメッセージを与えてくれていたこと。そのメッセージを受け取った後の主人公のモノローグが…本当にかっこよくて…せつなくて…母さん、涙ドバーでしたよ!!

人生で、あのとき自分のとった行動はあれでよかったのだろうかと悩むことや、正しいと思ってとった行動に悔いはないけれど、代わりに失ったものの大きさに戸惑うこと……そんなことって、少なからずありますよね。

イシグロさんからは、そういった喪失感に対しての落とし前のつけ方を教えてもらったような気がします。

そういうところが、イシグロさんは実に大人で渋いな~と思う所以であります。

そのメッセージの具体的な内容は、ネタばれになるので伏せたままにしておきますね。

気になる主人公の美学とは?また、失ったものとは?まだ読まれていないという方には、ぜひ実際に手に取って読んでもらいたいです。間違いなく名作です!渋いよ~(笑)









ノーベル文学賞

もらえる人もらえない人の違い





ちちなみに、ノーベル文学賞とはどんな作家さんがもらえるものなのか、ウィキペディアから引用してみますと…。

「文学の分野において理念をもって創作し、最も傑出した作品を創作した人物に授与される」とあります。

単に素晴らしい作品を書いた人、というのとは違うということが分かります。「理念」が必要なんです。何かこう、人類の福祉に貢献するような作品を書くことが望まれているわけなんですね。

そこをいくと、実際に賞をもらったイシグロさんは選考基準を満たしているんじゃないかなと思います。

例えば日本でもドラマ化されたイシグロさんの人気作「私を離さないで」って、読み方によってはものすごい格差社会の物語なんです。その中で、社会的弱者である主人公が自分の人生を受け入れてけなげに生きている姿にこれまた涙が止まらなくて…。こんな世界は悲しすぎる。現実の私たちは、こんなんじゃないもっと違う別のいい社会を作っていかなきゃと思いましたもん。

この作品は戦争の話ではなかったのですが…。「戦争反対!」と声高に叫ばれるより、「戦争を体験した方」の小さな声を聞く方が、よっぽど身に染みて戦争のない世の中にしたいと思わされますよね。そういうのと読後感が似ている気がします。

カズオ・イシグロさんは、社会の問題を捉えて、それを読者に共感させて考えさせるのが本当にうまいと思います。まさしくノーベル文学賞をもらえるタイプの作家さんと言えるのではないでしょうか。

では逆にノーベル文学賞をもらえないタイプの作家さんとは、どんな方なのかと考えると…。やっぱり村上さん?

個人的に母さんは、村上さんの作品の多くを、癒しの物語だと思って読んでいます。読んだ後に難しいことを考えて頭を悩ませたという記憶は…う~ん。ないなぁ~。どちらかと言えば、私は読んだ後に充足感を得ています。なんというか、満たされる感じなんです。

主人公がどんなに理不尽で困難な場面に出会っても、素敵なサブキャラたちがうまいタイミングで助けてくれる。そのサブキャラたちの魅力に萌える。そんな読み方をさせて頂いています。

子どもがハッピーエンドで終わる絵本を繰り返し読むように、私は村上さんの小説を繰り返し読んでいるのです。

人類の福祉について考えるというより、自分自身を励ましてもらえる。だから何度もページを開きたくなるのかもしれません。















これからも

お2人を応援していきます





いかがだったでしょうか。勝手気ままに間違った解釈や失礼なことを書いていて、たまたま読んで下さった方に不快な思いをさせてしまっていたとしたら、すみません。ブログ界の片隅で、かまぼこ一切れがつぶやいているだけですので…。

私にとって、イシグロさんも村上さんもとても大好きな作家さん。例えるなら、イシグロさんの作品は渋いワイン。強い主張・メッセージが込められているイメージ。かたや村上さんの作品はウィスキー。いろいろな飲み方が楽しめる。そのどちらも、私の人生には欠かせません!!(笑)

これからも、イシグロさんと村上さんどちらも応援していきたいと思っています。(若干ハルキ寄り)

だらだらと独り言をつぶやかせていただきましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。それでは、また(^^)









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